ベニテングタケを食べてみたのだが…
実は今回、試食を目的にベニテングタケをキープしました。
今から書く内容は私が自己責任のもとに検証した記事であって、記事内での発言も私個人の気休めや自己暗示に過ぎません。
賢明な諸君は安易にマネしないようお願いします。
●女王の風格
ベニテングタケといえば言わずと知れたキノコの女王であり、もはや毒キノコを指すアイコンでもあります。
毒キノコであるにもかかわらず、その華麗で妖艶な容姿からお伽話やゲームでも大人気なのは一般人でも知るところでしょう。
このベニテングタケ、実は非常に美味だと言われてます。
その旨味成分であるイボテン酸は、グルタミン酸の実に10倍もの旨味を誇る…と文献には記されていて、そう言われるといったいどんな味なんだろうと興味が湧くのも無理はないのです。
ただしこのイボテン酸自体が毒であるのを忘れてはいけません。
さらにこのイボテン酸がムッシモールに変化し、より強い毒性を示すといいます。
今回採取した現場ではどれもイボが消失し、さらにあの毒々しい赤も若干薄い個体ばかりだったのが残念でした。
どうせ女王様にいたぶられるなら、より風格のある個体にお願いしたかった…てゆーか私はむしろSですが。
女王の理想型(Wikipediaより)
●敵前逃亡寸前
前置きはまぁいいや。とにかくこのキノコを見つけた瞬間、女王に初めて会えた喜びと同時に、うっすらとした戦慄を覚えました。
というのも、私は以前から「ベニテングタケを見つけたら食う!」と高らかに周知していたからであります。
ついに毒キノコと対峙しなければならない時が来たのです。だがここへ来てやはり怖気づく。やはり毒キノコは毒キノコであって正直怖い。
帰宅後はまずキノコ仲間数人にメール。
「今からベニテン食うから」
ほら、なんつーの?禁煙する人ってやたら周囲にアピールするじゃない。そうやって自分を追い込むところから始めないと、今にも逃げ出しそうな心境なんですよ。
それに自殺する人ってわざわざ人目に付く場所を選んだりするでしょ?なぁに、これでキノコ人生に箔が付くってもんよ!
…などと軽く考えてました。この時まではね。
●調理
キノコ仲間の「はよ食え」の野次に押されながら意を決します。
やはり焼いて食うのが一番でしょう。てなわけでアルミホイルに載せてオーブントースターへ。
食べるのはもちろん1本だけ。だって2本食ったら火の玉撃てるようになって危ないでしょ?
いやそんな冗談を言っている場合ではないwww
1本だけならさほど人体に影響ないと言われてますが、これは肝臓に蓄積するアマニチンという毒の話であって、イボテン酸やそこから変化するムッシモールの影響は含まれません。
ちなみにアマニチンは大変な猛毒で、あの破壊の天使ドクツルタケなどに多量に含まれることはキノコ好きなら誰もが知るところ。
ベニテングタケはこのアマニチンを微量に含有しています。
さて旨味成分でもあり毒でもあるイボテン酸が多く含まれるのは、軸よりも傘。ならばと傘が開ききってないものを選びました。
てゆーかどうせ開くんだから大きさは関係ないんじゃね?というツッコミはこの際シカトね。そこはつい抵抗感の少ない方へと心が動くというものです。
●実食
出来上がりました。
まずは滲み出た汁を恐る恐る舐めてみます・・・・
美味い!!これは美味い!!
いまだかつて味わったことのない旨味だ!!
ウワサは本当だったww
これがイボテン酸の力だというのか・・・・
なんと表現したらいいの?味の素4:昆布出汁6ぐらいかな…
いやこれはまた別の旨味だと思いますが、とにかく普通のキノコの旨味を超越したものです。
そして噂通り傘に旨味が多く含まれているのがわかります。とにかく傘は美味かった!
完食。畏怖を払いのけて食欲が勝りました。もうどうにでもな~れっと!
どうせ乗りかかった船なら、この味を最後までしっかり味わうべきだと思ったのです。こういうのを「毒を食らわば皿まで」と言います。なんか奇遇ですなぁアハハハ。
そして今後のキノコライフにおける武勇伝として語り続けたい…などと安易に考えてました。
一応胃腸には自信があります。キノコ仲間には「3時間後を楽しみにしててくれww」などとおどけたメールで実況報告。
食後は通常通りソファーに座りコーヒーと煙草。精神的な不安を紛らわすためにPCでニュース記事など閲覧。
このまま何もなければいいが…
●異変は予想よりも早く
一般的に毒キノコによる中毒症状は、食後2~3時間後に現れると言われてます。私が食べたのは20時ちょうどだったので、23時頃が勝負時であると踏んでいました。
ところが食後30分でどうも胃もたれする。食前につまみ食いした天ぷら(二切れ)が悪かったのか、それとも警戒状態にある心理が影響しているのか、この時点では断定できませんでした。
しかし時間の経過とともに、胃もたれから吐き気に変化していったのであります。
●ついに危機の到来
21時。体が不自然に熱くなり発汗し始めます。これはいよいよヤバイかも。
急激な嘔吐に備えてトイレに篭もることにしましたが、トイレのドアの前で激しい目眩に襲われます。
若干しびれる手でなんとかドアを開け、崩れるように便器の前にへたり込みました。もう気分は最悪。こんなに気持ち悪くなるのは生まれて初めて。
視界が狭窄・暗転し、仲間からのメール着信音も歪んで聞こえます。もちろんメールを見る余裕などなく、どうしてこんな馬鹿げたマネをしたのかと調子に乗った自分を猛省しました。
あまりの苦しさに救急搬送の可能性さえも脳裏に浮かびます。この気持ち悪さは胃腸や胸ではなく、明らかに脳に起因するものでした。
吐こうとしても何故か吐けません。ここで便器にすがる態勢をやめて横になると、不思議と楽になりました。
その時に撮った発汗の様子が上の写真です。
●あっけない収束
仰向けになって5分ぐらいでしょうか。急に楽になり、仲間にメール報告出来るまで回復してきました。
ここで一旦立ち上がり、吐き気も消えていたのでリビングに戻って念のため再び横になります。
なんという症状でしょう。苦痛のピークは急激に訪れ、そして嵐のように去っていきました。
これがベニテングタケの中毒症状の全てではないでしょうけど、とにかく長時間持続する苦痛じゃなくて本当によかった。いや、幸運でした。
本種を摂取すると30~90分ほどで吐き気、眠気、発汗、視聴覚や気分の変化、多幸感、健忘といった症状が現れる。
より重い中毒では、混乱、幻覚といったせん妄症状や昏睡がおき、症状は2日以上続く場合もあるが、たいていは12~24時間でおさまる。
医療機関での治療は、胃洗浄がおこなわれる。解毒剤は存在しない。(Wikipediaより抜粋)
ちゃんと30~90分後って書いてあるやんwww
「幻覚を見る」などとまことしやかに噂されるベニテングタケですが、そのような症状は一切ありませんでした。
おそらく一本程度では現れない症状なんでしょうね。
また多幸感や健忘もなく、十分に通常の感覚だったと思います。まぁ個人差かもしれませんけどね。
ただし眠気については完全に否定できません。リビングに戻ってからすぐ深い眠りに陥り、朝まで一度も目が覚めることはありませんでしたから。
でもこれは当日の山歩きの疲労に由来するものだった可能性も十分にあります。
まぁベニテングタケの味は体験に値するほど美味であるのは間違いありません。
ただ…やはり中毒症状は苦しかったです。はっきり言って懲り懲り(^^;)
もし再びこの味が恋しくなった時は…その時は滲み出た汁を舐める程度にとどめたいと思ってます。
最後にもう一度言いますが、この記事は人柱となって苦しんだ私の様子をニヤニヤしながら楽しんでいただくためのものであり、決してベニテングタケの賞味を推奨するものではありません。
よい子は安易に真似しないで下さい。どうなっても知りませんからwww
じゃあの!
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